アニサキス
アニサキス
当院では、生の魚介類を食べた後に起こる急なみぞおちの痛み、吐き気、嘔吐などに対して、アニサキス症を含めた診断と治療を行っています。
アニサキス症とは、アニサキスという寄生虫の幼虫が寄生した魚介類を生または加熱不十分な状態で食べることで起こる病気です。アニサキスは、サバ、アジ、イワシ、サンマ、イカ、カツオ、サケなど、身近な魚介類にみられることがあります。幼虫が胃や腸の粘膜に入り込もうとすると、強い腹痛や吐き気を起こすことがあります。
胃にいるアニサキスは、胃カメラで直接確認し、鉗子で摘出できる場合があります。虫体を取り除くことで、症状の改善が期待できます。一方で、腸に進んだ場合は胃カメラでの摘出が難しく、腹痛や腸閉塞に似た症状を起こすこともあります。当院では、症状の経過、食事歴、診察所見を確認し、必要に応じて胃内視鏡検査、迅速血液検査、腹部エコー、CT検査などを組み合わせて判断します。

アニサキス症では、「何を食べたか」と「いつから痛くなったか」が重要です。以下のような症状や状況に心当たりはありませんか。
「食あたりだろう」「明日まで様子を見れば治るだろう」と放置すると、強い痛みが続いたり、別の病気を見逃したりすることがあります。急な強い腹痛、嘔吐、発熱、じんましん、息苦しさがある場合は、早めに受診してください。特に息苦しさ、全身のじんましん、血圧低下、意識が遠のく感じがある場合は、アレルギー反応として救急対応が必要になることがあります。
アニサキス症は、幼虫がどこに入り込むかによって、主に胃アニサキス症と腸アニサキス症に分けられます。
胃アニサキス症
胃アニサキス症は、アニサキスが寄生した魚介類を食べてから、数時間から十数時間以内に発症することが多いタイプです。みぞおちの強い痛み、吐き気、嘔吐などがみられます。
痛みは、アニサキスが胃粘膜に入り込もうとする刺激に加え、体がアニサキスに反応して起こす局所的なアレルギー反応が関係すると考えられています。内視鏡で虫体を確認し、摘出できた場合には、症状の改善が期待できます。
ただし、胃痛の原因がすべてアニサキスとは限りません。胃潰瘍、胆石発作、急性膵炎、虫垂炎、腸閉塞、心臓の病気などでも急な腹痛が起こることがあります。食事歴だけで決めつけず、症状や診察所見に応じて必要な検査を行います。
腸アニサキス症
腸アニサキス症は、アニサキスが胃を通過して小腸や大腸に到達した場合に起こります。食後十数時間から数日後に、下腹部痛、腹部膨満感、吐き気、嘔吐などを起こすことがあります。
胃と異なり、腸アニサキス症では内視鏡で虫体を直接確認して摘出することが難しい場合があります。多くは対症療法で改善を待ちますが、腸管の強いむくみによって腸閉塞のような状態になったり、強い炎症を起こしたりすることがあります。症状が強い場合や診断が難しい場合は、CT検査などで状態を確認し、必要に応じて入院可能な医療機関へご紹介します。
胃アニサキス症が疑われる場合、胃カメラは診断と治療を同時に行える重要な検査です。アニサキスが胃粘膜に付着している場合、その場で内視鏡用の鉗子を用いて摘出します。
胃カメラでは、食道・胃・十二指腸を直接観察し、アニサキス虫体の有無、胃粘膜の発赤やむくみ、びらん、潰瘍の有無を確認します。アニサキスが見つかれば、内視鏡の先端から鉗子を出し、虫体をつかんで取り除きます。
虫体を摘出できれば、原因となる刺激が取り除かれるため、痛みの改善が期待できます。ただし、炎症やアレルギー反応が残ることもあるため、症状の経過を確認しながら必要な薬を使用します。アニサキスがすでに胃を通過している場合や、胃以外の病気が疑われる場合は、血液検査、腹部エコー、CT検査などを組み合わせて判断します。
当院では、通常光観察に加え、必要に応じて画像強調観察を用いながら、胃粘膜を丁寧に確認します。検査室には青色系の補助照明を取り入れ、患者さんが落ち着いて検査を受けられる環境づくりにも配慮しています。嘔吐反射が強い方や検査への不安が強い方には、経鼻内視鏡や鎮静剤を使用した胃カメラもご提案できます。鎮静剤を使用した場合は、検査後にリカバリーベッドで休憩していただきます。
強いアレルギー症状、血圧低下、呼吸苦、激しい腹痛、腸閉塞が疑われる場合は、当院での対応だけでなく、救急対応や入院可能な医療機関への紹介が必要になることがあります。
アニサキス症は、正しい調理と保存で予防できる病気です。生魚を食べる機会が多い方、釣った魚をご自宅で調理する方は、以下の点に注意してください。
アニサキス幼虫は、十分な加熱または冷凍で死滅します。加熱する場合は、中心部までしっかり火を通すことが大切です。目安として、70℃以上、または60℃で1分以上の加熱が有効です。冷凍する場合は、-20℃で24時間以上が目安です。
家庭用冷凍庫では温度が十分に下がらない、魚の中心まで凍結するのに時間がかかる場合があります。生で食べる場合は、信頼できる店舗で適切に処理された刺身用の魚を選ぶことも重要です。
アニサキスは肉眼で確認できることがあります。生魚を調理する場合は、明るい場所でよく確認し、見つけた場合は取り除いてください。魚を購入した後は、できるだけ早く内臓を取り除き、内臓を生で食べないことが大切です。魚が死亡して時間が経つと、幼虫が内臓から筋肉へ移動することがあります。
切り身を薄く切る、細かく刻む、よく噛むことは、リスクを下げる可能性はありますが、確実な予防法ではありません。確実性が高いのは、十分な加熱または適切な冷凍です。
ワサビ、醤油、酢、レモン汁、塩、一般的な料理酒では、アニサキスを十分に死滅させることはできません。しめサバなど酢でしめた魚でも、アニサキスが生きていることがあります。
生魚を食べた後の急な強い腹痛は、アニサキス症だけでなく、急性胃炎、胃潰瘍、胆石、膵炎、腸閉塞などのサインであることもあります。自己判断で我慢せず、食事内容と症状が始まった時間をメモして受診してください。
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