過敏性腸症候群
過敏性腸症候群
当院では、腹痛、下痢、便秘、腹部膨満感などが慢性的に続き、日常生活や仕事に支障をきたしている方に対して、過敏性腸症候群を含めた診断と治療を行っています。
過敏性腸症候群とは、腹痛や腹部不快感に加え、下痢、便秘、便の形の変化などが慢性的に続く一方で、大腸カメラ検査や血液検査などでは大腸がん、炎症性腸疾患、潰瘍などの明らかな異常が見つからない病気です。現在では、脳と腸が互いに影響し合う「脳腸相関」や、腸の知覚過敏、自律神経の乱れ、腸内環境、過去の感染性腸炎などが関係する機能性消化管疾患として考えられています。
通勤電車、会議、試験、外出先などで急にお腹が痛くなる、トイレの場所が気になって外出が不安になる、便秘と下痢を繰り返すなど、症状は生活の質に大きく影響します。当院では、症状のタイプを確認し、必要に応じて大腸カメラ、迅速血液検査、腹部エコー、CT検査などを組み合わせ、他の病気を除外したうえで、一人ひとりに合わせた治療をご提案します。

過敏性腸症候群では、腹痛と便通の変化が繰り返し起こります。以下のような症状やお悩みに心当たりはありませんか。
過敏性腸症候群は、検査で異常がないからといって「気のせい」という病気ではありません。一方で、血便、黒色便、発熱、体重減少、貧血、夜間に目が覚める腹痛、50歳以降に初めて出た症状、家族に大腸がんや炎症性腸疾患の方がいる場合は、別の病気が隠れている可能性があるため、早めの検査が必要です。
過敏性腸症候群は、便の状態によって大きく4つのタイプに分けられます。タイプによって治療薬や食事の工夫が変わるため、便の形や頻度を確認することが大切です。
① 下痢型
急な腹痛とともに、軟便や水様便を繰り返すタイプです。朝の通勤時、外出前、緊張する場面で症状が出やすく、トイレが近くにない状況への不安が強くなることがあります。
② 便秘型
便が硬い、排便回数が少ない、強くいきまないと出ない、残便感があるなどが中心のタイプです。お腹の張りやガス感を伴うこともあります。単なる便秘と異なり、腹痛や腹部不快感を伴う点が特徴です。
③ 交代型
下痢と便秘が時期によって入れ替わるタイプです。ある時期は下痢が続き、その後便秘が続くなど、便通が安定しにくいため、薬や食事の調整が難しいことがあります。
④ 分類不能型
明確に下痢型、便秘型、交代型に分けにくいものの、腹痛、張り、便通異常が慢性的に続くタイプです。症状の経過を確認しながら、治療方針を調整します。
過敏性腸症候群は、腸の形に大きな異常がなくても、腸の動きや感じ方に複数の変化が重なって起こると考えられています。
腸の動きは、自律神経や脳の影響を受けています。ストレス、不安、緊張、睡眠不足、疲労などが続くと、自律神経のバランスが乱れ、腸の動きが過剰になったり、逆に停滞したりします。その結果、下痢、便秘、腹痛、ガス感などが起こりやすくなります。
脳と腸が互いに影響し合う関係を脳腸相関と呼びます。過敏性腸症候群は「気持ちの問題」ではなく、脳と腸の反応が過敏になっている状態として理解することが大切です。
過敏性腸症候群では、腸が通常より敏感になっていることがあります。健康な人では気にならない程度のガス、便の移動、腸のふくらみでも、強い痛みや不快感として感じることがあります。
この知覚過敏により、「検査では異常がないのに痛い」「少しの張りでもつらい」という状態が起こります。症状の強さは、腸の見た目の異常の有無だけでは説明できません。
感染性胃腸炎の後に過敏性腸症候群を発症することがあります。また、食事内容、腸内細菌、睡眠不足、運動不足、ストレス、月経周期なども症状に影響することがあります。脂っこい食事、アルコール、カフェイン、香辛料、冷たい飲み物、小麦や乳製品、一部の発酵しやすい糖質で症状が悪化する方もいます。
過敏性腸症候群の診断では、症状の特徴を確認すると同時に、大腸がん、炎症性腸疾患、感染性腸炎、甲状腺疾患、糖尿病、婦人科疾患など、似た症状を起こす病気を見逃さないことが重要です。
大腸カメラでは、大腸の粘膜を直接観察し、大腸がん、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、クローン病、虚血性腸炎などの有無を確認します。血便、便潜血陽性、貧血、体重減少、発熱、夜間症状、便が細くなった、50歳以降に症状が出てきた場合は、大腸カメラによる確認をおすすめします。
当院では、富士フイルムの内視鏡診断支援機能「CAD EYE」を導入し、大腸内視鏡検査中の画像をAI技術で解析して、ポリープなどの病変が疑われる部分の検出を補助します。また、画像強調観察や拡大内視鏡を活用し、病変が疑われる部分では表面構造や血管の模様を詳しく観察します。AIは医師の診断を置き換えるものではありませんが、丁寧な観察を支える補助機能として活用しています。
大腸カメラが不安な方には、鎮静剤を使用した検査もご提案できます。下剤の服用が不安な方には、院内での下剤服用スペースや一部個室をご案内できる場合があります。鎮静剤を使用した場合は、検査後にリカバリーベッドで休憩していただきます。症状に応じて、迅速血液検査、腹部エコー、CT検査も組み合わせ、腸以外の原因も含めて確認します。
過敏性腸症候群の治療では、症状のタイプに合わせた薬物療法と、生活習慣・食事の調整を組み合わせます。症状が完全になくなることだけを目標にするのではなく、日常生活で困る場面を減らし、安心して外出や仕事ができる状態を目指します。
① 薬物療法による確実なコントロール
下痢型では、便の水分や腸の動きを調整する薬、腸の過敏な動きを抑える薬、整腸剤などを症状に応じて使用します。便秘型では、便をやわらかくする薬、腸内の水分を増やす薬、排便を促す薬などを選択します。交代型や分類不能型では、便の状態や腹痛の程度に合わせて慎重に調整します。
腹痛や張りが強い方には、腸のけいれんを抑える薬、ガス症状を和らげる薬、漢方薬などを組み合わせることもあります。ストレスや不安が強く関係する場合は、睡眠や生活環境を含めて相談し、必要に応じて不安や緊張を和らげる治療を検討します。市販薬を長く続けている方も、便の状態や症状に合っているか一度確認しましょう。
② 生活習慣と食事の改善
(低FODMAP食の視点)
薬の効果を高め、再発を防ぐためには、食事、睡眠、運動、ストレス管理も重要です。まずは、規則正しい食事、十分な睡眠、適度な運動を意識しましょう。脂っこい食事、アルコール、カフェイン、香辛料、冷たい飲み物は症状を悪化させることがあります。
近年、発酵しやすい糖質を一時的に控える低FODMAP食が注目されています。小麦、豆類、一部の乳製品、玉ねぎ、りんごなどで症状が悪化する方もいます。ただし、自己流で長期間厳しく制限すると栄養バランスが崩れることがあります。まずは症状と食事の関係を記録し、必要に応じて無理のない範囲で調整することが大切です。
過敏性腸症候群は、命に関わる病気ではありませんが、生活の質を大きく下げることがあります。一人で我慢せず、症状のタイプと困っている場面を整理しながら、当院で一緒に治療方針を考えていきましょう。
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